もう23年ほど前になるが、高校のクラスに“ザク”そっくりのヤツがいた。これがもう笑っちゃうほどそっくりで、目がひとつしかないとか緑色の顔をしていたとか肩に角が生えたパッドを入れていたってことはないけれども(彼はラグビー部だったので、もし肩に角があったらいい武器になっていたに違いない)、どこから見てもザクだったのである。泳ぐ姿は“ズゴック”。まあ適当に想像してください。 彼が異様なガンダム好きだったのである。本放送が低視聴率のまま打ち切りになり、その存在を知っている人はわずかで、かろうじて名古屋テレビで最初の再放送が始まらんとする時代(当時の日本サンライズ——当時はそういう名前だった——のアニメは名古屋テレビ制作だったので、名古屋テレビではよく再放送をしていたのだ)だった。 その彼がガンダムの放映がある日は部活をさぼって早々に帰宅し、放送がはじまる30分前にテレビのブラウン管を布で拭き、お茶とお菓子を用意して万全の準備をして観るのだ、と主張していたのが面白くて、そこまでいうならいっちょ観てやるかと思ったのが最初だ。曜日は忘れたが、午後6時だか6時半からだか放送されていた記憶がある。 それが、めっぽう面白かったのである。セイラさんにぶたれたいって思ったくらい面白くて(テレビを拭いたりはしなかったが)、毎週欠かさず観るようになってしまった。すべてはそのザクに似た同級生のせいである。(荻窪圭:コラム本文へ)