蓮実氏:ソフトバンクショップではもちろんのこと、一般のご家庭から、法人向けモデル「Pepper for Biz」も好評をいただいて、大企業から中小企業までさまざまな場所にPepperはお引き合いをいただきました。ご家庭で家族やペットのように愛情を注がれているPepperもいれば、介護施設で癒し役を引き受けたり、商業施設で情報ガイドとして、あるいは呼び込みのセールスマンとして役目を果たしているPepperもいます。現場で得られたフィードバックから、いまのPepperが求められている役割にどんなものがあり、最適な姿はとはどんなものか。それから外れるものがあれば、次の製品開発に活かせる資産になります。
吉田氏:IoTSPとは、IoT(Internet of Things)に、サービス(Service)とヒト(People)を合わせた言葉です。どんどんモノやサービスが繋がっていっても、ヒトの専門性や、ヒトとヒトとの協調性が必要で、それがキーになると考えています。ヒトはもっと付加価値が高いものにフォーカスすることで、逆に専門性が要求されるのです。だから、あえて「IoTSP」なんだと、考えています。
村田氏:日本の製造業の多くが、この【工場】部分のいわゆる「カイゼン」だけに過度にフォーカスしがちであり、IoTもまた「カイゼンのための手段」であると捉える傾向にあるように感じています。カイゼンが過去数十年の日本企業の強さの源泉であったことは確かだと思いますが、これからもずっとそうなのでしょうか?グローバル視点でみると、ドイツやアメリカ、中国など世界中でなぜIoTやインダストリー4.0が盛り上がっているかといえば、さきほどの[1][2][3]すべての工程を一気通貫でスマート化できるからです。これまで[2]【工場】部分つまり製造品質では日本勢が圧倒的に強く、海外勢はどうしても歯が立たなかった。しかしIoT時代になると、【工場】工程の品質だけで勝たなくても、前後にあたる【設計、受注、調達】から【物流、保守、部品】までの、いわゆる「顧客にとってのEnd to Endのバリュー」で勝てばよいわけです。「モノからサービスへ」とか「マス・カスタマイゼーション」、「設計のデジタル化によるスピードアップ」、「PLM(製品ライフサイクル管理)」などは皆その流れです。つまり海外勢はIoTによるスマート化によって“土俵を変え”、日本勢に対してこれまでとは違う軸での勝負を仕掛けようとしてきているわけです。「ドイツの“スマート工場”と呼ばれる工場を視察に行ったが大したことなかった、自分たちの現場のほうが進んでいるくらいだ」という声をきくことがあります。まさにそこが落とし穴なんです。【工場】の視察で目に見えるものはスマート化の本命ではないのですから。こうした背景がある中で、日本勢は相変わらずカイゼンこそが自分たちの強みだと考え、「スマート工場」に注力し続けていてよいのでしょうか?